2008年10月05日

カメラ目線

『屋根の上のバイオリン弾き』(1971)では映画が始まってまもなく、主人公テビエ(トポル)が観客であるわたしたちに向かって、いわゆるカメラ目線で話しかけてきます。タイトルが象徴しているのは不安定な生活のことであって、そうならないためには伝統を守ることです、と、しまいには歌もまじえて教えてくれます。


こんなふうに観客に話しかけてきた人は他にもいました。『メリー・ポピンズ』(1964)バート(ディック・ヴァン・ダイク)です。町のことにくわしいバートは、背中に背負った一人何役もの楽器の音をドンチャカドンチャカ鳴らしながら、さくら通りの紹介と道案内をしてくれたのでした。


映画の登場人物なのにスクリーンの向こうからこちら側へ、虚構の世界から現実世界の観客に対して話しかけてくるというのは、考えてみればフシギなことです。でも、それほど違和感がないのはなぜなんだろう。ミュージカル映画というしかけのせいか、歌や音楽に紛れ込ませてあるからか。


カメラ目線でもうひとり思い出すのが、『モロッコへの道』(1942)など「珍道中」シリーズのボブ・ホープ。彼の場合は、ドロシー・ラムーアと腕を組んで向こうへ歩いていく途中で振り向いて「いまからいいところだからこれ以上ついてくんなよ」みたいなことをにやけた顔で言ってきたりする。このシリーズではこういうのはときどきありますが、こういう話しかけられ方もおもしろい。


* * *



こういう映画を見ていると、ウディ・アレン監督の『カイロの紫のバラ』(1986)みたいな逆パターンも連想します。つまり観客である自分が映画のなかに入って、登場人物に話しかけることができるとしたら……。いろんな映画の世界に入ったところを想像して楽しむのも一興かもしれません。ちなみにわたしは、『モダン・ミリー』(1967)がいいな。マジー(キャロル・チャニング)とお近づきになって元気を分けてもらおう。そういえば、ミリー(ジュリー・アンドリュース)もサイレント映画の字幕入りでちらっとカメラ目線していましたっけ。







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posted by なおみコ at 22:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 余談 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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